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【名車への道】’95 マセラティ シャマル
2020/01/28
■これから価値が上がるネオクラシックカーの魅力に迫る【名車への道】
クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにも、これから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく企画「名車への道」。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
作りもデザインもマセラティらしい希少な高級モデル
所有できる人はまさに「男」だね
――さて今月はまた面白い車を見つけました。とても良い状態のシャマルです。
――あーそういえばそうでしたね。
――確か元F1ドライバーですよね?
――マセラティってスーパーカーだけじゃなく、ビトルボのようなきちんとしたパッケージングの高級車も結構発売してましたよね?
――なるほど。あ、この車ですね。
――大事に乗られていた感がでてますね。あ、話の続きをおねがいします。
――エグゼクティブGTという意味では似てますけど、結構系統が違いますね。
基本的にはビトルボのデザインにカウンタックでお馴染みのマルチェロ・ガンディーニが手を加えて作ったんだ。短いボディを力強く表現するために、お約束の前後ブリスターフェンダーと高性能な空力を示すように作られた大型のロッカーパネルが特徴だね。
マットブラックのBピラーは特別感を演出しつつ、ロールケージの役目を果たしていたんだよ。それと面白いのがボンネットに装着されたワイパー用のスポイラーだね。これは後にも先にもこの当時のマセラティ以外では見たことがないね。
高速でワイパーが浮いてしまうことを懸念して装着されているんだけど、こういった意味があるのか分からないパーツを標準で装着する心意気がマニアにはたまんないと思うよ。
――車名のシャマルってどういう意味なんです?
そうそう話が少し脱線しちゃうかもしれないけど、僕の記憶ではデ・トマソが指揮をとっている時のマセラティはステアリング、シフトノブ、サイドブレーキレバーに“ニレの木”を使っているモデルがあったんだけど、シャマルもシフトレバーにニレの木が使われているんだよね。
これは西洋では歴史的な木なんだ。ワインを造るぶどうの木の支え木に一緒に栽培するんだけどニレの木はブドウの木が安定するまで共存するんだよ。だからニレとブドウは良い関係、すなわち良縁を表すにも使うそうなんだ。
――なんかそういう話はマセラティっぽいですね。スペックはどうなんですか?
――ただ止まっているだけでもエンジン音に迫力がありますもんね。
フラットプレーンのクランクシャフトは左右の排出ガスの流れを干渉しないから高回転で強いんだ。レーシングエンジンのV8はこのタイプだね。3.2L V8から326馬力を発揮するんだから。かなりパワフルだよね。
――スペックも凄いですね……。
一抹の不安を感じずにいられないけど、踏み込めばドカンとパワーが炸裂する。とても奥深さが漂うモデルだね。正直、これを普通に乗れちゃう人は、ほんと男の中の男だと思うよ(笑)。
■注釈
*1 アレッサンドロ・デ・トマソ
アルゼンチン出身のF1ドライバーで1959年にデ・トマソを設立。2004年に解散となるまで多くの名モデルを生み出した。
*2 ヴァレルンガ
1964年から1968年まで製造されたデ・トマソ初の市販モデル。設計や思想など歴史的に意義のあるモデルとして有名。
*3 カムシン
エジプトの砂嵐から名前を採られたGTモデル。1973年から1982年まで製造され約430台が生産されたといわれている。
*4 3200GT
1997年にフィアット傘下となったマセラティが最初に生産したモデル。「ブーメラン」と呼ばれる独特なテールライトデザインが特徴。
マセラティ シャマル(初代)
1990年から1996年に製造された2ドア高級クーペ。3.2LのV8ターボエンジンに6MTを組み合わせ、最高速度は260㎞/h以上とアナウンスされていた。デザインは巨匠マルチェロ・ガンディーニで、その遺伝子はのちにギブリにも継承されている。
※カーセンサーEDGE 2020年3月号(2020年1月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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