BMW Z4 ▲新車時価格は軽く500万円を超えていた先代BMW Z4の中古車が今、比較的好条件なモノであっても総額200万円ぐらいから探せるようになっています。でも、それって本当に「お買い得」なのでしょうか? いろいろと検討してみました!

走行5万km前後までの物件も総額200万円から

なんともステキな輸入オープン2シーターである「BMW Z4」の中古車が今、新車時価格の半額あるいは半額以下で狙える状況になっている

といっても現行型Z4(現行型トヨタ スープラの姉妹車)はさすがにまだ「新車の半額」にはほど遠く、イケるのは、マニアからは「E89」という型番で呼ばれることが多い2世代目のBMW Z4だ。新車時価格はおおむね500万円超級だったそれの比較的好条件な(走行5万km前後までの)中古車が、総額200万円ぐらいから狙えてしまうのである

素晴らしい話にも聞こえるが、世の中に「うまい話」というのは存在しない。それゆえこの先代BMW Z4にも、新車の半値である代わりにいろいろヤバい点があるのではないか?

そのあたりの真実を、様々な角度から検討してみることにしよう。
 

BMW Z4▲こちらが先代(2代目)BMW Z4。リトラクタブルハードトップを採用した2人乗りのスポーティモデルです

電動ハードトップ採用の2座スポーツ

まずは先代=2代目BMW Z4のプロフィールをざっとおさらいしておく。

E89こと2代目のBMW Z4は、2009年途中から2016年12月まで販売されたBMWの2座式オープンカー。

ご先祖様にあたるBMW Z3(1996~2003年)と初代Z4ロードスター(2003~2009年)はソフトトップを採用していたが(※初代Z4は固定屋根の「Z4クーペ」もあった)、2代目Z4はフルオートマチックで開閉するリトラクタブルハードトップに変更された。

デビュー当初のグレードは「sドライブ23i」「sドライブ35i」の2種類で、それぞれのエンジンとトランスミッション、そして車両本体価格は下記のとおりだった。

●sドライブ23i|2.5L直6/6速AT/523万円
●sドライブ35i|3L直6ツインターボ/7速DCT/695万円


2010年5月には最高出力340psの最上級グレード「sドライブ35is」が追加され、2011年10月には2.5L直6のsドライブ23iを廃止し、代わって2L直4ターボ+8速ATの「sドライブ20i」が登場した。

●sドライブ35is|3L直6ツインターボ(340ps)/7速DCT/815万円
●sドライブ20i|2L直4ターボ/8速AT/499万円


2013年4月には一部改良が行われ、ヘッドライトをLEDのスモールライトリングを使った新デザインにするなど、外装および内装のデザインを微妙に変更。

そして、エントリーグレードであるsドライブ20iにもウインドディフレクターやオートエアコン、ハンズフリーフォン機能、音声コントロール機能などを標準装備とした。

その後2016年12月には販売終了となり、約2年のインターバルを置いて新型=トヨタ スープラの姉妹車である3代目のZ4が上陸した――というのが、2代目BMW Z4の大まかなヒストリーだ。
 

BMW Z4▲グレードやオプションによって細部はいろいろ異なりますが、先代Z4の運転席まわりはおおむねこのようなデザインと雰囲気。写真は本国仕様
BMW Z4▲運転席および助手席はこのような感じ。運転席まわりの「物入れスペース」はさすがに若干少なめです

そのビジュアルはいまだ「古さ」を感じさせない

そして2021年2月下旬現在、「新車時価格の半額あるいは半額以下」で狙える先代BMW Z4は、2013年4月の一部改良以前=前期型のすべてのグレードなわけだが、流通量がとりわけ多く、なおかつ「総額200万~260万円ぐらい」という比較的手頃な価格で販売されているのは、初期のベーシックグレードであった「sドライブ23i(2.5L自然吸気直6+6速ATのグレード)」だ

本稿ではそのsドライブ23iに絞って、先代BMW Z4の「買いや否や?」について考えていく。

まずは「見た目」の問題である。

仮に「総額250万円で走行4.8万kmぐらいの、2009年式BMW Z4 sドライブ23i(オリオンシルバー/禁煙車/修復歴なし)」があったとしよう。

そのビジュアルはおおむねどんなものなのか?

まず「車自体」としての見た目というか雰囲気には、現役バリバリのカッコ良さがいまだ十分ある。少なくとも「中途半端な古くささ」は感じさせないビジュアルだ。

もちろん細かいことにうるさいカーマニアの目には、いろいろなアラも見えるのだろう。

しかし、あくまで一般的な視点から見るのであれば、「なんだかよく知らないけど妙にカッコいいオープンカー」にしか見えないのが、先代のZ4なのだ。人によっては「英国MI6のスパイ(要するに007シリーズのジェームズ・ボンド)が乗ってる車」に見える可能性すらある。総額250万円級だというのに!
 

BMW Z4▲リトラクタブルハードトップを開けるとこのような雰囲気に。……単純にカッコいいですな
BMW Z4▲ハードトップを閉めるとこのようなフォルムに変化します
 

次に「中古車としてのビジュアル」はどうか?

これに関しては、中古車というのは1台ごとにコンディションが千差万別であるため断定的なことは言えない。だが、「総額250万円前後で走行5万km前後」の2009~2010年式Z4であれば、しっかり探せば「普通にキレイなやつが見つかるはず」とだけは断言できる。

もちろん中古車ならではの使用感はそれなりにあるわけだが、「あちゃーっ、これはさすがにちょっと……」的にはボロくはない、「普通にいい感じ」の物件は多数流通しているのだ。

ちなみに総額200万~260万円ぐらいで買えるのは、2013年4月に行われた一部改良以前の年式である。しかし、このときの改良はさほど大がかりなものではなかったため(超ざっくり言えばヘッドランプがちょっと変わった程度)、そういった意味でも特に古さは感じないはずだ。
 

BMW Z4▲こちらがマイナーチェンジ後のビジュアル。違うといえば違うし、「似たようなもの」といえば似たようなものでもある……といった感じでしょうか?

普通に使う分には先代であっても性能&装備に不満なし

で、お次は「性能」の問題である。

先代の前期型Z4とは、もはや10年ほど前の車。現代の様々な類似車や、2019年3月に登場した現行型(3代目)BMW Z4と比べて、もしも「性能や装備のレベルが著しく劣る」のであれば、いくら新車の半額だったとしても、あえて買う意味はあまりない。

ここについても感じ方や価値観も人それぞれであるため、断定的なことは言いにくいのだが、少なくとも筆者個人としては「先代の性能と装備でもぜんぜんオッケーです!」と考えている。

どんな車でも旧型と新型をガチンコで比較すれば、なんだかんだで新型の総合力の方が上なのは当然である(でなければフルモデルチェンジする意味がない)。

そして、新型(現行型Z4)のエントリーグレードであるsドライブ20iが搭載する2L直4ターボエンジン+8速ATは、さほどスポーティな印象ではないものの、レスポンスと経済性は大いに良好。標準装着されるのがランフラットタイヤではなくなったという点も、実は魅力的だ。

だが普通に使う分には、先代sドライブ23iの2.5L直6エンジン+6速ATだって十分に魅力的ではある。また、この世代まではランフラットタイヤが標準装着されていたわけだが、先々代では目立っていたランフラットタイヤ特有の「コツコツ感」も、先代ではずいぶんと改善されている。

というか初度登録から10年ほどは経過している中古車ゆえ、もはやランフラットではない普通のラジアルタイヤに交換されている先代Z4も多いだろう。

つまり、「そりゃ新型の方がいろいろと性能がいいのは当然ですが、先代だってぜんぜん悪くはないですよ!」ということである。
 

BMW Z4▲クイクイと曲がる様を楽しめる、なかなかスポーティな乗り味なのです

部品代はさすがに割高だが、基本部分は普通に丈夫

で、見た目にも性能にも特に大きな問題がないことがわかったならば、最後に残るのが――これがいちばんやっかいなポイントなのだが――「故障問題」である。

お安い予算で中古車が買えたとしても、「納車後に故障が頻発し、結局は高い買い物になってしまった」というのでは意味がない。そのあたりはどうなのか?

結論から申し上げると、「確かにあちこちが少々壊れたり、消耗部品が交換時期を迎えたりもするだろう。だが購入時に『ちゃんとしてる物件』を選んでちゃんと整備すれば、シャレにならないほどのお金と手間がかかる事態は(電動ルーフ以外には)たぶん起こらない」ということになる。

E89型BMW Z4の基本部分は比較的頑丈で、しょっちゅう工場に入院しているような類の車では決してない。

しかし、「長年国産車ばかりに乗ってきて、この先代BMW Z4が自分にとって初めての輸入車だ」という人は、国産車と比べると割高な消耗部品の価格や交換サイクルの短さに、最初は面食らうだろう。また電装系などのマイナートラブルも、国産車と比べれば発生頻度はやや高いかもしれない。

しかしこれは、ほぼすべての部品が海を渡ってやってくる高性能輸入車の「宿命」のようなものなので、基本的にはあきらめるしかない。というか、慣れるしかない。

とはいえ何十万円、何百万円もかかるような部品交換や修理がしょっちゅう必要になるわけでは決してないので、過剰にビビる必要があるわけでもない。「ある程度の整備用貯金」と「ある程度の覚悟」さえあれば、ごく普通に乗り越えられる問題なのだ
 

BMW Z4▲こちらが先代BMW Z4に搭載された直列6気筒エンジン

ただし電動ハードトップの故障には注意が必要

ただ、やや大きめな問題として「リトラクタブルハードトップ故障の可能性」というのは確かにある。

ルーフを開けようとしても途中で止まってしまい、にっちもさっちもいかなるなる――みたいなトラブルが時おり起こるのが、先代BMW Z4という車なのだ。

このトラブルの原因となる箇所や部品は何種類かあるのだが、例えばリトラクタブルハードトップの油圧系統からのオイル漏れが不動の原因であった場合、正規ディーラーで修理すると50万円ぐらいは軽くかかってしまう。

……この問題があるがために、先代BMW Z4の中古車相場は比較的安い――とも言えるのだ
 

BMW Z4▲先代Z4に限った話ではなく、リトラクタブルハードトップを採用しているモデルの中古車はほぼすべて、この「ルーフ故障発生の可能性」という問題を大なり小なり抱えています
 

しかし、ルーフの故障は「100%必ず起こる」というわけではなく、比較的軽度の修理で直るケースもある(エンジンを一度切り、そして再始動するだけで直ることすらある)。

また、電動ルーフの動きをつかさどる「ハイドロリックユニット」は比較的安価な直輸入品なども存在するため、正規ディーラーではなく町場の専門工場に依頼すれば、まあまあお安く直すことも可能ではあるだろう。

しかしながらこの「ルーフ問題」が――必ず起こるものではないとはいえ――先代BMW Z4という車を買ううでのリスク要因であることに変わりはない。

もしもあなたがこのリスクを許容できるのであれば、総額200万円や250万円ぐらいで購入する(コンディションの良い)E89型BMW Z4とは、本当に素晴らしい乗り物である。カッコよく、そして運転も極度に気持ちいいという。

しかし、ルーフ関係のリスクなど「いっさい負いたくない!」というのであれば――残念ではあるが、固定屋根をもつ何らかの車を買うしかない。鉄製の固定屋根であれば、基本的には「屋根にまつわる修理費用」は半永久的にゼロ円で済むのだから。

もちろんその分だけ、「オープンエアの快感」や「ボタン一つでクーペにもオープンカーにもなる快楽」は、いっさい味わえないわけだが。
 

文/伊達軍曹、写真/BMW

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BMW Z4(2代目)×総額300万円未満
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。