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なんだかんだアルファードっていーんです!【週刊 クルマ事件簿】
- 筆者: 清水 草一
アルファードは全面銀歯グリル!?その顔を見たら石になってしまう!
アルファード/ヴェルファイアがマイナーチェンジを受け、いかつい顔がさらにいかつくなった! スゲエエエエエ!
個人的にはこの顔、嫌いではない。いや好きだ。スバラシイとすら思う。購入は1ミリも検討しないが、自動車デザインの新境地を拓いている。
正確には、ヴェルファイアはまったくどうでもいいのだが、アルファードの顔に引き込まれる。一度見たらもう目をそむけられない。蛇女ゴーゴンの顔を見たものは石になると言うが、アルファードの顔も石になってしまう。これは決して悪口ではない。誉め言葉である。
ではなぜ、ヴェルファイアはまったくどうでもよくて、アルファードにのみ惹かれるのか?
これはマイナーチェンジ前からだが、ヴェルファイアは大ヒットした先代の劣化コピーに過ぎないからだ。斬新さはどこにもなく、ただギラギラ度を若干増したのみで、完成度は逆に落ちている。正直、センスもかけらも感じられない。
しかしアルファードは違う。あの全面銀歯のようなグリルには、心底衝撃を受けた。
もはやホラー!?マイチェンで銀歯がお歯黒に!
故・岡本太郎先生は、芸術をこのように規定された。
「なんだこれは! こんなものは見たことがない!」
もちろんアルファードの銀歯グリルを芸術だとは申しませんが、見たことのない造形であったことは間違いない。ここまでやればスゲエ!そういうことである。
その斬新な銀歯が、マイナーチェンジでお歯黒になった。お歯黒の縁がすべて銀メッキされているかのようで、もはやホラーだ。凄すぎる!
もちろん、アルファードには敵も多い。斬新な試みは常に大きな反感を買う。その代表は、「下品すぎる」「威圧的すぎる」という声だ。
私もそう思います。下品すぎるし威圧的すぎますネ! 下品&威圧的に関してはヴェルファイアも同じ。
が、アルファードのグリルは違う。マイナーチェンジ後も相変わらず、見たことのない新鮮さがある!
つまりこれは、ムーヴラテの逆バージョンなのである。
人は嫌悪を感じるものを乗り越えなかったら進歩はない
初代ムーヴラテが登場した時、私はそのきゃわゆいヌイグルミフォルムに強い嫌悪を感じ、吐き気さえ覚えた。ところがそのことをテリー伊藤さんに訴えたところ、こう一喝された。
「人はねぇ、嫌悪を感じるものを乗り越えなかったら、進歩はないですよおぉぉぉぉ!」
その時は私も「でもどうしてもダメなんです、ムーヴラテだけはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」と抵抗したが、しばらくして、その深い意味が腹に染みわたってきた。
嫌われれば嫌われるほど価値がある!
たとえば、吾妻橋にあるアサヒビールの炎のオブジェ。“金のウ○コ”と呼ばれるアレが建設された当初、首都高からソレを見て、こうつぶやいた知人がいた。
「ふざけたもの造りやがって……」
パリのエッフェル塔もしかり。建設当初は「パリで最も醜いもの」と酷評された。
首都高に関してはいまだにそういう声があり、日本橋付近は地下化されることになりそうだが、東京を代表する映像としてよく引用されるのが首都高・江戸橋ジャンクションであることに、異論を唱える人はなぜか少ない。ちなみに私は、「首都高を世界遺産に!」と長年唱えているが、賛同者はいない。
ま、首都高の景観論争は措くとしても、アルファードの顔は、アサヒビールの炎のオブジェやパリのエッフェル塔に相通じるものがある。当初、それに反発を感じる人がいるのは当然だが、そのようにしてデザインの新たな地平は切り拓かれていくのだ。つまり、嫌われれば嫌われるほど価値がある! アンチのいない革新が後世まで残ったことなんかありますか?
アルファードの顔を見て、「下品すぎる「威圧的すぎて街の景観を悪化させている」と言ってるアナタ! アナタは新しいものを受け入れられない守旧派の抵抗勢力です!
だっていーんだもん!
ところでアルファード/ヴェルファイア、走りの方がどうなのか。
いいです……。
カーマニアとしては1ミリも欲しいと思わないが、フツーに流しててこんなラクなクルマはない! 適度にフワフワしてて、すっごくラクチン!
カーマニア的には、大開口部がもたらすボディ剛性の根本的な不足や、重心の高さによる斜め段差乗り越え時の不快な横揺れ等に受け入れ難い部分もあるが、それが問題になるのって、走行時間のほんの一部というか一瞬のみ。フツーに平たん路を走ってるだけならホントにラク! そして安心! 広くて見晴らしがイイから気分も上々! 四角くて見切りがいいから狭い道でも意外と取り回しがラク!
やっぱデカいクルマって安心感あるよネ! だから女子にモテるんだよネ! ビッグな男と付き合ってるみたいなもんで。
しかもアルファードに乗ってると、このまま家に帰らなくても大丈夫という安心感までついてくる。ここに住めばい~や! みたいな。家よりゴージャスだし。
正直なところ、アルファードに試乗していて、他のクルマでは決して感じることのない安心感に包まれてしまった私でした。
アルファード、お値段も高いですし、1ミリも買おうとは思いませんが、売れるのはよくわかります! だっていーんだもん!
[レポート:清水草一]
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で交通ジャーナリストとしても活動中。雑誌連載多数。日本文芸家協会会員。記事一覧を見る
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