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悪路でも走りの正確性が高いのがウリ! ハイブリッドと本格的な4WDを両立したホンダの四輪駆動技術を解説
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:本田技研工業株式会社・MOTA編集部
自動車の電動化が進み、四輪駆動性能もまた電動4WDが台頭する中、ホンダではハイブリッドでもガソリンエンジンの4WDと同じメカニズムを採用しているという。そのメカニズムや採用するメリットは何なのか。その詳細に迫る!
ホンダの電動車の4WDはガソリンエンジンの4WDと同じメカニズムを採用
今は環境/燃費性能を向上させるため、ハイブリッドを筆頭に、電動機能を備える車種が豊富に用意されている。2021年に国内で新車として売られた乗用車の内、約40%が電動車であった(マイルドハイブリッドを含む)。
そうなるとハイブリッドなど、電動車の4WD(四輪駆動車)も増える。前輪駆動をベースにした車種では、後輪に独立したモーターを搭載して駆動する電動4WDも登場してきた。このタイプは、後輪をモーターのみで駆動するから、エンジンの駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトを装着していない。
ところがホンダは、ハイブリッドについても、後輪をモーターだけで駆動する4WDは採用していない。2021年に新車として売られたホンダの小型/普通乗用車の内、電動車が58%を占めたが、その4WDはすべてプロペラシャフトを使って後輪へ駆動力を伝える方式だ。つまりガソリンエンジンの4WDと同じメカニズムを採用している。
ホンダが採用する「リアルタイム式4WD」と「ビスカスカップリング式4WD」は共にプロペラシャフトを使用し後輪へ駆動力を伝える
ホンダの4WDでは、前後輪の駆動系の間に、リアルタイム式4WDユニットやビスカスカップリング式4WDユニットを装着している。このメカニズムが駆動力を前後輪に配分するわけだ。
リアルタイム式4WDは、ヴェゼルやCR-Vに搭載されている。電子制御される多板クラッチを使って、前後輪に駆動力を振り分ける。今日のクルマには、4輪ABSや横滑り防止装置といった安全装備に必要なセンサーが数多く装着されている。その情報も活用して、前後輪の駆動力配分を決めている。
ビスカスカップリング式4WDは、フィットなどに搭載され、電子制御ではなく機械式で駆動力を前後輪に配分する。主たる駆動輪の前輪が空転すると、ビスカスカップリング内部のオイルがかき混ぜられ、その力を利用して後輪にも駆動力を伝える。
プロペラシャフトを使用し後輪へ駆動力を伝える方式のメリットとデメリットとは?
ホンダも採用する多板クラッチやビスカスカップリングを併用して、プロペラシャフトにより駆動力を伝える方式では、運転感覚が自然に受け取られる。例えば雪道を走行中に、ステアリングホイールを内側へ切り込みながらアクセルペダルを踏み増した時、多板クラッチのリアルタイム式4WDやビスカスカップリング式4WDの場合は、ドライバーが想定した駆動力が前後輪に配分される。そのために車両を内側へ向けやすい。
この点で後輪をモーターで駆動する方式は、車種によって後輪側の駆動力が大きく異なる。後輪側のモーターが小さく、発進時だけ後輪を駆動して車両を前側へ押し出し、速度が上昇すると後輪のモーター駆動を停止して2WDになるタイプもある。これでは雪道でも、発進時以外は4WDの効果が発揮されない。
逆にモーターの駆動力が強く、雪道では想像以上に良く曲がり、違和感が生じるタイプもある。このように後輪をモーターで駆動する4WDは、セッティング次第で、さまざまな味付けが可能だ。そこがメリットであり、欠点にもなり得るところだ。
一方、プロペラシャフトを使って後輪へ駆動力を伝えるホンダのタイプは、アクセルペダルを踏みながら曲がる時の動きが自然な印象で、その後に車両がどのような動きをするのかも予測しやすい。プロペラシャフトで後輪へ駆動力を伝える4WDは、長年にわたって利用されてきたから、運転感覚も馴染みやすい。
そしてハイブリッドのe:HEVとリアルタイム式4WDは、互いに親和性の高い組み合わせになる。e:HEVでは、エンジンは「発電」、モーターは「駆動」と役割を分担しており、モーターには駆動力の増減を機敏に行える性質もある。そのために、リアルタイム式4WDによる前後の駆動力配分も、即座に走りへ反映させられる。
さらに今の車両制御では、アクセルペダルを踏みながらカーブを曲がる時でも、必要に応じて4輪のブレーキを独立して作動させる。このブレーキ制御をリアルタイム式4WDによる前後輪の駆動力配分に組み合わせると、走りの正確性がさらに高まる。ステアリングの操舵角に対して、忠実に車両の進行方向を変えることが可能だ。
次回は「e:HEV×リアルタイム式4WD」を採用する新型ヴェゼルの四駆性能を紹介!
逆にプロペラシャフトで後輪に駆動力を伝える方式の欠点は、床下にプロペラシャフトを通すためのスペースが必要になることだ。後輪をモーターだけで駆動する4WDに比べると、空間効率が下がり、融通も利きにくい。また運転感覚が自然な印象になる代わりに、前輪の駆動力を弱めて後輪を大幅に高め、後輪駆動のような駆動力配分を作り出すこともできない。それぞれ一長一短があるわけだ。
次回は、そんなプロペラシャフトを用いながらもホンダ独創のセンタータンクレイアウトの採用により、空間効率を下げずに後輪に駆動力を伝える新型ヴェゼルの四駆性能「e:HEV×リアルタイム式4WD」を解説する。今、人気のコンパクトSUVである新型ヴェゼルの四駆性能はいかなるものなのか? 詳細は次回までお楽しみに!
[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:本田技研工業株式会社・MOTA編集部]
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1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る
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