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マツダ MAZDA3 SKYACTIV-X 試乗レポート│最先端技術に価値を見い出す特別なグレード
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林 岳夫・佐藤 正巳
先行して発売されていたMAZDA3のガソリン/ディーゼルエンジンモデルから遅れること約半年、遂にスカイアクティブXモデルの詳細が明らかとなった。果たして注目の新規開発エンジンの実力はいかに!? 自動車評論家の渡辺陽一郎氏が公道インプレッションをお届けする!
遂に注目のスカイアクティブXが発売開始!
マツダ3の発売は2019年5月だが、その後、約半年間にわたりスカイアクティブX搭載車の動力性能や燃費データが「未定」になっていた。以前は10月に販売を開始する予定だったが、使用する燃料をレギュラーガソリンからプレミアムガソリンに変更することになり発売が延期されたのだ。
一般的にクルマを買う時は、まず車種を決めてからグレード選びを考える。この時には全グレードの動力性能、燃費、装備、価格などを確認した上で判断したいから、「未定」の空欄があったらマツダ3を購入できない人も多かっただろう。そのスカイアクティブXを搭載したマツダ3がようやく買えるようになった。今回公道で試乗した。
最高出力180馬力、最大トルク22.8kg-mでNA換算では2.3リッターに匹敵するスカイアクティブX
スカイアクティブXは、火花点火制御圧縮着火方式を使う画期的なエンジンだ。エアー・サプライ・システムと呼ばれるスーパーチャージャー(エンジンの力で作動する過給器)、モーター機能付き発電機を使ったマイルドハイブリッド、クリーンディーゼルターボが使用するようなパティキュレートフィルター、高燃圧噴射システムなどを備える。
明らかにされたスカイアクティブXのエンジン性能は、直列4気筒2リッターで最高出力は180馬力(6000回転)、最大トルクは22.8kg-m(3000回転)となる。ノーマルタイプの自然吸気エンジンに当てはめると、2.3リッターに匹敵する性能だ。
WLTCモード燃費は、6速ATが17.2km/L、ファストバックのみに用意される6速MTは17.4km/Lになる。1.5リッターノーマルガソリンエンジンの6速ATが16.6km/L、2リッターは15.6km/Lだから、スカイアクティブXは、2.3リッター並みの性能を発揮する割に燃費効率は優れている。
ちなみに1.8リッタークリーンディーゼルターボは、最高出力が116馬力(4000回転)、最大トルクは27.5kg-m(1600~2600回転)で、WLTCモード燃費は6速ATが19.8km/Lだ。日常的な動力性能を左右する最大トルクと燃費数値だけで見ると、ディーゼルが高効率だが、スカイアクティブXはガソリンでそこに近付けた。
実用回転域の駆動力が高いから数値以上の余裕を感じる
スカイアクティブXを搭載したマツダ3 ファストバック(AT)を試乗した。ガソリンエンジンとしては低回転域が粘り強い。スーパーチャージャーの過給効果は1600回転付近から感じられ、直線的に速度を高める。4500回転前後から速度上昇が活発になり、高回転域の吹き上がりも良好だ。フル加速ではATが6500回転でシフトアップした。
動力性能は、先に述べた通り2.3リッター並みだが、実用回転域の駆動力が高いから数値以上の余裕を感じる。ATは6速だから、アクセルペダルを深く踏み込んだ時には、高回転域を維持しながら効率良く加速できる。動力性能では過給器の存在を意識させず、自然な感覚で運転できた。
巡航中にアクセルペダルを踏み増した時の反応も良い。低回転域では駆動力が下がっているが、アクセルペダルを踏み増すと、マイルドハイブリッドのモーターがエンジンの駆動力を支援する。このプロセスが滑らかで、底力が強く感じた。
唯一、ノイズが気になった
気になったのはノイズだ。エンジンが2000回転以下で巡航している時、アクセルペダルを軽く踏み増すと、ややゴロゴロとしたノイズを感じた。アクセルペダルを軽く踏んだり、戻したりする操作を繰り返した時は、ヒューヒューと高音のノイズが響く。
小気味良く操作でき、素早いシフトチェンジが可能な6MT
6速MTを装着したスカイアクティブX搭載車にも試乗した。エンジン特性に違いはないが、6速MTの操作感は良い。シフトストローク(シフトレバーを前後左右に動かす範囲)が少なめで、なおかつ小気味良く操作できるから、素早いシフトチェンジが可能になる。
今のエンジンは、シフトアップする時にアクセルペダルを戻しても、回転数が下がりにくい。MTでは微妙な待ち時間が生じてしまうから、スカイアクティブXは、タイミングを見計らってマイルドハイブリッドの回生充電力を強める制御を行う。これが抵抗になってエンジン回転が適度に下がり、滑らかにシフトアップできるようにした。
足まわりでは、ボディの軽い車種が乗り心地で有利になる傾向
ファストバックは全高を1440mmに抑えたこともあり、走行安定性も優れている。18インチタイヤは踏ん張りが利き、峠道を走る時には外側に位置する前輪が高いグリップ力を発揮する。車両をしっかりと内側に向けて、良く曲がる印象だ。
また危険を避けるため、下り坂のカーブでステアリングホイールを内側へ切り込みながらアクセルペダルを戻す操作をしても、後輪がしっかりと接地して挙動を不安定にさせない。車両重量が2リッターノーマルエンジン搭載車に比べて約80kg重いから、軽快な印象は少し削がれたが、安定性に支障はない。ボディやサスペンションの取り付け剛性も高く、挙動の変化が穏やかに進むから、ドライバーは安心して運転できる。
乗り心地は時速50キロを下まわる速度域では少し硬い。バタバタした粗さはないが、路面のデコボコは明確に分かる。興味深かったのは、車両重量の軽い1.5Lエンジン搭載車の乗り心地が、意外に快適だったことだ。開発者に尋ねると「マツダ3の足まわりでは、ボディの軽い車種が乗り心地で有利になる傾向が見られる。重い車種は逆に不利」という。
つまり走行安定性と乗り心地のバランスでは1.5リッターが最良だ。軽快感が伴い、快適に移動できる。ただし1.5リッターは実用回転域の駆動力が高くて扱いやすいものの、車両重量が1300kgを超えるからパワー不足を感じやすい。1.5リッターは装備も不満で、安全性を高める前側方接近車両検知機能、交通標識認識システムなどをオプションでも装着できない。
そうなると選ぶべきエンジンは、2リッターガソリン、ディーゼル、スカイアクティブXの3種類になる。
スカイアクティブXは、最先端技術に価値を見い出すスペシャルティなグレード
マツダ3のエンジンによる価格差を比較してみよう。2リッターガソリンに比べて1.8ディーゼルターボは27万5000高く、スカイアクティブXはさらに40万7407高い。スカイアクティブXは前述の通り魅力的だが、スーパーチャージャーなどの機能が豊富に備わり、新規開発のエンジンだからコストダウンも利かない。その結果、価格が割高になった。
そうなると最も買い得なエンジンはディーゼルだ。2リッターガソリンに比べて27万5000高いが、プロアクティブツーリングセレクションの場合、ディーゼルは購入時の税額が2リッターガソリンよりも8安い。
従って実質差額は19万5000に縮まる。軽油価格が1L当たり125、レギュラーガソリンが145とすれば、6~7万kmを走ると燃料代の節約で19万5000の実質差額を取り戻せる。ディーゼルは動力性能にも余裕があるから、明らかに買い得だ。
グレードは、XDプロアクティブツーリングセレクション(291万1741)を推奨する。XDプロアクティブに、クルージング&トラフィックサポート、助手席の電動調節機能、CD/DVDプレーヤーなど17万500相当の実用的なオプション装備を加え、価格の上乗せは12万1000に抑えた。
いい換えるとマツダ3 スカイアクティブX搭載モデルは、最先端技術に価値を見い出すスペシャルティなグレードだ。多くのユーザーには、少々ノイズが粗いものの、ディーゼルが相応しいだろう。あるいは2リッターのガソリンだ。
[筆者:渡辺陽一郎/撮影:小林 岳夫・佐藤 正巳]
マツダ MAZDA3 SKYACTIV-X 主要スペック | |
---|---|
グレード名 | X L Package |
価格(消費税込み) | 3,380,463 |
全長×全幅×全高 | 4460mm×1795mm×1440mm |
ホイールベース | 2725mm |
駆動方式 | FF |
車両重量 | 1440kg |
乗車定員 | 5名 |
エンジン種類 | 直列 4気筒 DOHC |
総排気量 | 1997cc |
エンジン最高出力 | 132kW(180PS)/6000rpm |
エンジン最大トルク | 224Nm(22.8kg・m)/3000rpm |
トランスミッション | 6AT |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
燃料消費率(WLTCモード燃費) | 17.2km/L |
(WLTC市街地モード燃費) | 13.7km/L |
(WLTC郊外モード燃費) | 17.6km/L |
(高速道路モード燃費) | 19.0km/L |
タイヤサイズ | 215/45R18 |
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1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る
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