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VW パサート TDIハイライン 燃費レポート|欧州ディーゼルの実力を徹底評価
- 筆者: 永田 恵一
VW パサートTDI実燃費レポート|結果まとめ
起用グレード
今回の燃費テストでは、ドイツのVWが2015年に欧米で起こしたディーゼル車の排ガス不正問題の後、日本市場へは20年振りのディーゼル車投入ということでも注目を集めているパサートTDIをテスト。
グレードは4ドアセダンの上級グレードとなるTDIハイライン(車両本体価格489万9000、JC08モード燃費20.6km/L)を起用した。
燃費テスト概要
テストは2018年3月20日(火)の午前6時半頃開始し、午後3時頃帰京するというスケジュールで実施。天候は雨(強く降ることもしばしばあった)のち曇り、乗車人数はドライバー1名(体重約70kg)で行った。テスト中の最高気温は早朝に記録した8度と、「三寒四温」、「寒の戻り」といった冬から春という季節の変わり目を象徴する真冬のような寒さであった。交通状況は雨、5・10日、3月21日の春分の日の祝日前というトリプルパンチで、郊外路で工事渋滞や市街地も激しい混雑と、劣悪であった。
VW パサートTDIの平均実燃費は16km/L以上
パサートTDIの燃費は、トランスミッションが6速DSGであることが不利に働いたのか、全体的にライバル車に見劣りする結果となった。だが、大きな期待をしなければミドルクラスのディーゼル車として及第点の燃費とも言えるだろう。
”以上”としているのは、ナビに小数点以下まで表示される燃費計があると、高速道路の計測が終わるまで気づかず、小数点以下が表示されないメーター内の数値を参照したからだ。よって、高速道路と平均の実燃費は参考値としてご覧いただきたい。
VW パサートTDI実燃費レポート|結果まとめ | |
---|---|
車種名 | VW パサート |
グレード | TDIハイライン |
パワートレイン | 2Lディーゼル |
駆動方式 | 2WD |
JC08モード燃費 | 20.6km/L |
実燃費:平均 | 16km/L(参考値) |
実燃費:市街地 | 14.0km/L |
実燃費:郊外路 | 16.2km/L |
実燃費:高速道路 | 20km/L(参考値) |
VW パサートTDI実燃費レポート|市街地・街乗り編
パサートTDI 市街地での実燃費:14.0km/L
VW パサートTDI実燃費レポート|市街地・街乗り編 | ||
---|---|---|
車種名 | 実燃費 | パワートレイン |
VW パサートTDI 2018年3月計測 | 14.0km/L | 2Lディーゼル |
マツダ アテンザ ディーゼル(MT) 2013年計測 | 14.6km/L | 2.2Lディーゼル |
パサートTDIは、最近では珍しいくらい市街地での使用には向かない車であった。
理由はいくつかあるが、特に気になるのはエンジンの騒音だ。エンジン始動時だけでなくアイドリング中も、車内外で騒音が気になる(特にその日一発目のエンジン始動の騒音はかなりのものだ)。
さらに、トランスミッションがDSGであるため、街乗りで使う低回転域だと「グモモモ」というこもり音のような騒音も耳に付く。振動もそれなりにあるので、ディーラーでの試乗で入念に確認して欲しい。
アイドリングストップは停止前から始まるタイプだが、停止寸前のブレーキの調整や止まりそうで止まらないという渋滞中でも、不必要なアイドリングストップをすることは少なかった。
エンジン再始動は素早く、テストした日の気候であればアイドリングストップする頻度は止まるたびほとんど、停止中再始動することもほとんどなく完成度は高かった。
停止まで対応する先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)とレーンキープアシストを市街地で使ってみた。
加減速は滑らかで、レーンキープアシストも市街地でもしばしば作動しており、特に渋滞中は有難い運転支援システムと感じた。さらに停止後はそのままブレーキを掛け続けてくれるブレーキホールドが働き、疲労軽減に一役買っていた。なおブレーキホールドはスイッチを入れておけば、ACCを使っていなくても作動する。
VW パサートTDI実燃費レポート|郊外路編
パサートTDI 市街地での実燃費:16.2km/L
VW パサートTDI実燃費レポート|郊外路編 | ||
---|---|---|
車種名 | 実燃費 | パワートレイン |
VW パサートTDI 2018年3月計測 | 16.2km/L | 2Lディーゼル |
マツダ アテンザ ディーゼル(MT) 2013年計測 | 20.0km/L | 2.2Lディーゼル |
市街地のようなストップ&ゴーが少なく、動いている時間が多い郊外路に入るとパサートTDIの印象は大げさに書くと別の車のように好転する。
まずエンジンは190馬力という出力に加え、40.8kgmという4リッターエンジン級のトルクは絶大で、アップダウンのあるワインディングロードを2000回転から4000回転あたりを使って走るとパワフルで楽しい。
スポーティなイメージは薄いパサートながら、特にシャープということこそないものの、ハンドル操作に対する車の動きは大変正確かつハンドルに伝わってくる手応えも非常にシッカリしており、ワインディングロードではパワフルな点も含め「いつまでも運転できそう」と感じるくらいの楽しさを備えている。
乗り心地も市街地のスピード域だと僅かな硬さや足回りのドタバタ感があるが、郊外路や高速道路のペースになれば、上下動の収まりも一発で収まるといった質感の高い「芯のある硬さ」のあるタイプだった。やはり同クラスの日本車に対しては1枚上手で、月並みな言葉ながら輸入車らしい個性を感じられた。
今回テストに使ったのは18インチタイヤを履くハイラインだったが、購入するのであれば17インチタイヤを履くエレガンスラインにナビなどの必要なオプションを加えるという選び方がリーズナブルに思えることもあり(ハイラインに着く運転席のマッサージ機能は捨てがたいところもあるが)、エレガンスラインであれば乗り心地はさらに良化する可能性もある。
パサートTDIは、ノーマルモード、エコモード、スポーツモードの3種類で走行モードの切り替えができる。それぞれの特徴を書き出してみるとこんな具合だ。
エコモード
シフトアップのタイミングがノーマルモードの1800回転あたりに対し1500回転前後と早めになる、アクセルを全閉した際にエンジンブレーキが掛からずニュートラル=空走状態となり燃費を稼ぐ(ニュートラルからブレーキを踏むとエンジンブレーキが掛かる)。アクセル操作に対するレスポンスもマイルドな方向になる
スポーツモード
ノーマルモードに対しシフトアップのタイミングは上のエンジン回転域まで引っ張り、アクセル操作に対するレスポンスもシャープになり、ハンドルも重くなる
エコモードだと、市街地編で書いた低回転域こもり音が少なくなるため快適性が増す。ナビ画面から毎回選ぶのは少々面倒ではあるが、普段はエコモードを使うのがお勧めだ。
VW パサートTDI実燃費レポート|高速道編
パサートTDI 高速道路での実燃費:20km/L台(参考値)
VW パサートTDI実燃費レポート|高速道路編 | ||
---|---|---|
車種名 | 実燃費 | パワートレイン |
VW パサートTDI 2018年3月計測 | 20km/L(参考値) | 2Lディーゼル |
マツダ アテンザ ディーゼル(MT) 2013年計測 | 23.5km/L | 2.2Lディーゼル |
高速道路編ではパサートTDIの動力性能、ACCの印象などをお伝えしよう。
エンジンフィールは2000回転以下の低回転域ではディーゼルらしい太いトルクは特に感じない、2000回転から4000回転の中回転域では「本領発揮」と感じるパワフルで太いトルク感があるものの、4000回転以上はただ回るという印象で、何らかの個性があるというタイプではなかった。
なおトップギアの6速に入るタイミングはDレンジ任せだと80km/h、パドルシフトを使うと70km/hあたりであった。
トップギアに入るスピードになると市街地で気になった騒音の高さは気にならず、むしろディーゼルの耳に心地いいエンジンが程よく聞こえるくらいで、快適な高速道路を使った長距離移動が楽しめそうに感じた。
高速道路でACCとレーンキープアシストを使った印象は、車間距離を一番短くしてもちょっと長い感じはあるものの、先行車に対する加減速はスムースで、レーンキープアシストも道路の白線を読むのが早く直線ではかなり車線の中央をキープしているのに加え、首都高速の緩いコーナーにも対応するなど、全体的な完成度は高く、普段から疲労軽減につながる運転支援システムとして有効に使えることが確認できた。
VW パサートTDI実燃費レポート|総合評価
パサートTDIの総合実燃費:16km/L台(参考値)
VW パサートTDI実燃費レポート|総合評価 | ||
---|---|---|
車種名 | 実燃費 | パワートレイン |
VW パサートTDI 2018年3月計測 | 16km/L(参考値) | 2Lディーゼル |
マツダ アテンザ ディーゼル(MT) 2013年計測 | 18.8km/L | 2.2Lディーゼル |
パサートTDIは最新のディーゼル車ながら、快適性など市街地での使用に向かない点や同クラスのライバル車に対し燃費で明確なアドバンテージが感じられない点は少し残念であった。
しかし市街地での快適性に関しては、そもそもディーゼル車はマツダの1.5リッターディーゼルのリコールが象徴するように負荷の小さい街乗りが多いと黒煙の原因となるススが溜りがちで、ススが溜ると軽油を吹いて行うDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター、ススを溜めるフィルター)の再生も増え燃費も悪化する、市街地では良くなっているとはいえ振動、騒音といったデメリットも目立ちがちという悪循環に陥ってしまう。
それだけにパサートTDIだけでなくディーゼル車は収支決算も含め走行距離が多い、高速道路での移動が多いといった人向けのエンジンであり、パサートTDIもそういった使い方をする人が選べばいいと思う。そうでない人は予算や使用条件に応じてガソリン車やプラグインハイブリッドのパサートにするべきだろう。
ただ日本では「サイズが大きくて広いセダン、ステーションワゴン」にあまり需要がないのも事実で、このクラスのディーゼル車を買うなら日本車であればアテンザディーゼルは安くてよく出来ているし、パサートTDIより100高くてもプレミアムブランドのBMW 320dやメルセデス・ベンツ C220dを選ぶ人も多く、日本でのパサートの存在感は薄れがちというのは否めない。
[Text:永田恵一]
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1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスのライターとして独立した。豊富なクルマの知識を武器に、自動車メディア業界には貴重な若手世代として活躍してきたが、気付けば中堅と呼ばれる年齢に突入中。愛車はGRヤリスと86、過去には日本自動車史上最初で最後と思われるV12エンジンを搭載した先代センチュリーを所有していたことも。記事一覧を見る
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