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EV航続距離が伸び、大幅進化したボルボの改良型PHEV「V90」「V60」を東京〜箱根間でロングドライブテスト!
- 筆者: 今井 優杏
- カメラマン:小林 岳夫
「すべてのモデルを電動化した自動車メーカー」であるボルボ。そんな同社の期待の新型プラグインハイブリッド2台で東京都内〜箱根往復のロングドライブを行いました。試乗した模様を自動車ジャーナリストの今井優杏さんがお届けします。
期待のボルボ新型プラグインハイブリッドで東京〜箱根間を往復するロングドライブを敢行
ナニを隠そう、世界に先駆けて電動化をいちはやく推し進めた自動車メーカー、それが実はボルボなのです。
来たる2030年全車EV化にむけて、ボルボはパワートレーンとプラットフォームの整理を敢行。まずはプラットフォームを大型のSPAと小型のCMAの2種に絞り、好評だったディーゼルエンジンを廃止。2020年にはガソリンエンジンモデルにマイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドを組み合わせて、ラインナップをすべて電動化しています。さらに満を持して本年、ブランド初のBEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー駆動の電気自動車)となるC40リチャージを日本にも導入。さらにすぐに次の新型BEVのリリースも控えている、とここまでが2017年から2022年6月までに行われてきた流れです。その速度感にも驚くし、企業として取捨選択の決定の早さにも改めて驚いてしまいます。
その結果、ボルボは全世界に先駆けて「すべてのモデルを電動化した自動車メーカー」の冠を手に入れたのです。
その結果、なにが起こるか。
早くもプラグインハイブリッドのモデルが大幅刷新を受けるタイミングに来たのでした。
今年の1月に発表されたのが、90シリーズと60シリーズのソレ。つまり、現行ラインナップのT8やT6が早くもビッグマイナーチェンジというわけなのです。
今回、その期待の新型プラグインハイブリッドで東京都内〜箱根往復という長距離試乗が叶ったので、レポートしていきます。
新型プラグインハイブリッドは“モーターのアシストにガソリンエンジンが付いている”という感覚
試乗したのは、往路ではV60 Recharge Plug-in hybrid T6 AWD Inscription(V60 リチャージプラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション)を、復路ではV90 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription(V90 リチャージプラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプション)です。
昨今、ボルボはSUVが大変好評なブランドになっていますが、やはりボルボの“王道”、エステートと呼ばれたその原点であるステーションワゴンに乗ると、その威厳とでもいいましょうか、そこはかとなく上品なしっとりさに包まれていると感じます。ボルボのクルマはどれも高感度なハイセンスさを備えているのですが、ステーションワゴンはなおのこと際立って、品格があるような気がします。
SUVに比べて低い着座位置も、それによって路面からのフィールがダイレクトに伝わる感じも、オンロード感のあるハンドリングも実にクラシック。それに組み合わされたのが、ボルボの最新世代電動化技術。この足し算、実に明快に“アリ”なのでした。
この刷新について、ボルボはこう簡潔に説明してくれました。
「これまでのプラグインハイブリッドは、“ガソリンエンジンのアシストにモーターが付いている”というイメージでした。しかし、新しいシステムは“モーターのアシストにガソリンエンジンが付いている”という感じです。つまり、日常走行域ほぼ、モーターで走行していただけるようになりました」。
そう、今回のキモはこの“EV走行域の拡大”なのです。
以前は45kmだった等価EVレンジは今回、75kmまで拡大(V90 リチャージプラグインハイブリッドの場合。V60 リチャージプラグインハイブリッドは91kmまで拡大)。このため、駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は約60%アップされています。
さらにトピックスは続きます。
CISG(クランク・インテグレーテッド・スターター・モーター)、つまりスターターモーターを兼ねた発電用のジェネレーターは、エンジンで駆動する前輪のパワーブースターとしても作動していましたが、この出力が46psから71psにアップ(V60 リチャージプラグインハイブリッドは48PSから71PSにアップ)。これにより、2リッター直4エンジンからはスーパーチャージャーが外されました。パワーブーストが電動化されたことで、より滑らかで効率のいい加速とトルク曲線を叶えることになっています。
さらにAWDではリアモーター出力も87psから145psに拡大されています。
全域でモーター感の強い、しっかりとEVが感じられる走りを実現
都内から箱根に向かう道中で、すっかりこの刷新の恩恵を受けることになりました。
まずはもう、全くエンジンが掛からないということ。どこまで行ってもかからない。ひたすらにEV走行のまま東名高速道路を南に下ります。
この日は生憎の雨でエアコンもさほど点けず、高速道路もタラタラのクルーズ状態で電費がことのほか良かったのが功を奏したのでしょう、なんとエンジンが掛かったのは、小田原厚木道路を降りて、まさに箱根駅伝でランナーを苦しめる、心臓破りの坂道に入ったあたりのことでした。おそらく60kmはモーターでしっかりと走ってくれただろうと思います。正直、この距離をモーターで網羅するなら、通勤時の頼り甲斐は相当なものだろうし、普段の生活ならボルボの言う通り、“普段はEV”な生活が出来てしまうこと請け合いです。
いや、もしかしたら途中では少し、エンジンが掛かったエリアもあったかもしれません。強いアクセルへの踏み込み時や、高速道路の合流時などで。しかし、たとえガソリンエンジンが作動していても室内はかなり静かで、それに気づかないほどでした。
つまり全域でモーター感の強い、しっかりとEVを感じられる走りが実現されているということです。
ちなみに、私はあまり好きではないので使用しませんが、Bレンジに入れて、メインディスプレイの選択画面でクリープをオフにすると、ほぼワンペダルな運転も楽しめます。
なぜ好みでないかというと、ワンペダルの際の回生Gや、やや気持ち悪くなってしまう敏感な三半規管の持ち主がゆえなのですが、強靭な三半規管をお持ちの諸兄は、EVならではのワンペダルも是非楽しんでいただきたいところ。
そして山に入ると、リアモーター出力のサポートを存分に受けることになります。
たとえメーターに表示されているバッテリー残量が寂しくなっていても、走行時のモーターアシスト量が体感的にも減ることはありませんでした。つまり、箱根の急峻な坂道でさえも、グググイっとお尻を押し出し、コーナリング後半をつるりんと攻略させてくれるのです。
今回の折り返し地点はハイアットリージェンシー箱根。ここに行かれた方ならご存知でしょうが、実は途中に一箇所、コンクリート塗装の、かなり滑りやすい急勾配の急カーブがあります。ほぼヘアピンなのにコンクリート、つまり雨の日はお風呂のタイルのように滑るのです。そしてこの日は生憎の雨。
試乗では、ここを敢えてイン・イン・インでミニマムにコーナリングしてみました。…滑りました。そりゃそうでしょう。
しかし、ここでリアモーターがググっとトルクを足してくれ「あ、滑った」と思っている間に坂道を駆け上がってしまったのです。…パワフル! ここでシステム総合462psの実力発揮、という一面を垣間見たのでした。
インフォテイメントシステムにGoogleを採用し、ボーダーレスの空間を創出
さて、今回のドライブで、ボルボの商品力をさらに引き上げた機能も体感できました。インフォテイメントシステムがGoogleになったことです。
いわゆるApple CarPlayやAndroid Autoのようにスマホ接続の機能ではなく、お馴染みの縦型ディスプレイの中にGoogleが組み込まれています。
使い方は同じ。「OK,Google!」と話しかけるだけで起動します。
ご存知の通りこの機能のすごいところは「曖昧検索」に優れている点。たとえば「OK,Google!おなかすいた」と言えば「それは大変ですね、近くのレストランを表示します」と、ご丁寧にドライバーへの労いの言葉まで付けて迅速に“言葉の先”を検索してくれます。
もちろん機能はクルマ用にアジャストされているので「OK,Google、エアコンを23度にして」とか「OK,Google、シートヒーターを付けて」なんていうオーダーにも応えてくれる。さらに、同一のGoogleアカウントでログインしていれば、自宅で検索していた目的地をクルマでもシームレスに検索することができ、クルマに乗りながらスマート家電の操作も出来るのだそう。
ボルボはこの電動化で、クルマと自宅のボーダーを無くし、まるでもう一つの家のように使える空間を叶えたと言います。
普通充電のみの対応なので、自宅に充電器のある人向けのクルマではありますが、もしそれが叶えられるなら、かなりスマートな選択肢となるでしょう。
[筆者:今井 優杏 撮影:小林 岳夫]
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自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る
自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。
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